スティーブ斉藤です!
私はアメリカで海外(国際)営業を30年以上行っております。日本ではトップセールスマンの方も海外で営業活動で苦戦する例も少なくありません。日本と海外の国では文化、習慣の違いもあります。
海外(国際)営業でセールス・営業経験30年以上!のスティーブ斉藤がお届けする「海外セールスのスキル・コツ」。
今回は「オープニング編」です。
「アポイントメント編」ではアポイントを取得する流れをご説明しましたが、その後の注意点や営業のコツをご説明します。
目次
第1回 -名刺交換後どうする?-
会社訪問の究極の目的は新しい商売を獲得することです。そのための第一歩が今!
その目的を達成するため具体的な営業の目標を確認しておきましょう。
具体的な目標
A) 担当者から出来る限り具体的な情報を聞き出す
B) 決定権をもつデシジョンメーカーと商談をする。
*アポを取った方がそれでないことがわかった場合、そのディシジョンメーカーの名前とタイトル(役職)を聞き、その訪問の際に名刺交換をさせてもらう。(理想)
*でなければ、次回に会うきっかけを今話している担当者にお願いする。
*目の前の担当者が乗り気でなければ、別の機会に連絡を取りアポをとる。
C) 見積もり依頼を受け、次回の訪問の約束を取り付ける。(通常)
D) その場で次回の出荷手配の依頼を受ける。(理想)
(第2回に続く)
第2回 -これはしません(シミュレーション)-
前もって入手した訪問会社の情報は下記の設定です。
1. 米国から日本に工業用の掃除機(塵を処理する機器)を輸出している
2. 年間を通して出荷があること。
3. デシジョンメーカーと今会っている。
営業: “はじめましてABC社の“Steve Saito”と申します。”(名刺を交換する)
“Hello, my name is Steve Saito.”
顧客: ”こちらこそはじめまして。Bob Smith(仮名)です。“
“Nice to meet you. I am Bob Smith.”
営業: ”早速ですが、これが弊社の会社案内です。ご説明します。“
“Here is our company brochure. Let me explain about our service.”
先輩: これはしません!
(第3回に続く)
第3回 -注意すべき4項目(シミュレーション)-
先輩: 商談の切り出しで注意すべき4項目を説明していきましょう。
第1「訪問の機会とその時間調整をしていただいた、お礼をまず言ってください。」
第2「会社案内は最初から見せないでください。」
新人: 会社案内を説明することから始めることが当たり前だと思っていました。
先輩: 具体的な商品の商談であれば別ですが、サービスの商談の場合、はじめから会社案内を見せることはしません。
ニーズが明確にならないうちに説明を始めると、顧客に必要のないサービスの説明まですることになり、双方にとって無駄な時間を費やすことになります。
まず、訪問の目的を言ってください。
新人: 会社案内の説明から入らないと、何をどう進めていいか判らず、どきどきします。
先輩: 商談の切り出しで注意すべき4項目の続きです。
第3「営業からは、必ず語尾が “か?” という質問形式で終わるように心がけてください。」
新人: 顧客はそう簡単に質問に答えてくれるでしょうか?
先輩: それもノウハウの一つです。徐々に教えていきますので大丈夫です。
質疑応答形式で対話をすると会話のキャッチボールが続き、情報も取りやすく、行き詰まって、頭が真っ白になることがなくなります。
新人: いましている会話のようですね。
先輩: そのとおりです。気づいてみれば、商談といっても普段の会話とあまり変わりはありません。
新人: ちょっとほっとしました。
先輩: 勉強と経験を繰り返せば、対話の名人になれます。とにかく相手の立場になって質問をしてきましょう。
商談の切り出しで注意すべき4項目の続きの最後です。
第4「顧客の名前を言いながら会話を進めてください。」
米国では会話のなかでよく名前を呼び合います。ではもう一度やってみましょう!
(第4回に続く)
第4回 -商談開始だが(シミュレーション)-
営業: “Mr. Smith、本日はお時間をいただきありがとうございます。”
“Mr. Smith, thank you very much for your time to meet with me today despite your busy schedule.”
顧客: “どういたしまして。”
“You are welcome.”
営業: “今回の訪問の目的は、御社の輸送のニーズに会ったサービスと物流コスト削減の御提案をさせていただきたいと思いお時間を頂戴しました。”
“The reason for this visit is to find out your shipping needs and requirements, so that we can prepare a rate and service proposal that best fits your transportation needs.”
顧客: “それでは見積もりをください。”
“Steve, please give me your rates.”
営業: “かしこまりました.”
“Yes, I will.”
新人: もう行き詰ってしまいました。やはり、まず運賃が知りたいんですね。
どうしたらいいですか?
先輩: 前半は完璧です。これでいいでしょう。
即、見積もりを聞かれた場合の次のステップはこの様に切り出してください。
(第5回に続く)
第5回 -5W1H とは?-
営業: “かしこまりました。最良の見積もりを提出させていただくために何点か質問してもよろしいいですか?”
“Yes, I will, Mr. Smith. However, in order for me to present you with the best proposal, I have some questions to ask you if it is ok with you.”
新人: こうして質問するチャンスをつくるのですね?
先輩: そのとおりです。
可能な限りの情報入手のきっかけとして、顧客に質問しても良いか許可をもらっておくと、後の商談がしやすくなります。
顧客にとっても利益になる見積もり提出のための質問ですから、応じてくれます。先に入手した情報を基本に5W1Hを念頭に営業を続けてみましょう。
新人: 5W1Hって「What」「Where」「Who/Whom」「When」「Why」「How」のことですか?
先輩: そのとおりです。
この中でも特にWhatが重要です。
これからの商談のすべてのきっかけはこの “What” から生まれます。
とにかく好奇心を大せいにもって、興味を示しながら、顧客と問答してください。
新人: 具体的にどういうものになりますか?
先輩:下記が具体的な情報です。
What〔何〕
A. 取扱商品はどんなもの
B. 最終的にその商品はどのように消費/利用される
Who/Whom〔誰〕
A. 業者選択の決定権を持つ担当者は誰?
B. 運賃を支払うのは誰?(輸出業者か輸入業者)
C. 現行使用しているサービスと船会社、フォワーダーは誰?
Where〔どこ〕
A. どこの国、港、空港、町からどこへ輸送するか?
B. 輸入された商品はどこかで一時保管されるか?
When〔頻度、時期〕
A. 何時頃出荷予定か、頻度は月、年、に何度ぐらいか?
Why〔なぜ〕
A. なぜ現行のサービスに満足しているか/不満足か?
B. なぜ海上輸送ではなく航空なのか?
C. なぜ毎月でなく毎週の出荷なのか?
D. なぜ一貫輸送を希望するのか?
E. なぜFOB・CIFなのか?
How〔輸送方法〕
A. 海上コンテナ、海上混載、航空便、鉄道、トラック、等
先輩: 以上は簡単な例ですが、多くの会社訪問及び電話での営業を経験することによって、自然な形で会話のなかに取り入れられるようになります。
慣れるまではこの5W1Hを意識しながら会話を進めてください。
新人: 結構沢山の情報入手が必要なんですね?
先輩: 最良の提案をするためには、可能な限り詳細な情報獲得がカギになります。 それでは続けましょう。
(第6回に続く)
第6回 -5W1H シュミレーション-
営業: “Mr. Smith, 出荷されている商品は工業用の掃除機と伺っていますが?”(What)
“Mr. Smith, I understand that you are exporting an industrial vacuum cleaner. Am I right?”
顧客: “そのとおりです。”
“You are right, Steve”
営業: “出荷はこの工場からですか?”(Where・どこから)
“Are you shipping out from this location?”
顧客: “そうです。”
“Yes.”
営業: “仕向け地はどちらまでですか?”(Where・どこまで)
“Where is the destination?”
顧客: “名古屋港です。”
“It is Nagoya port.”
営業: 御社のサイトでみたのですが、かなり大きなものですね。出荷手段はコンテナですか?(How)
“Mr. Smith, when I visited your homepage I found out that the machine is rather big. Do you ship them by full container?”
先輩: この着眼点はすばらしいです。
出荷時の荷姿等を知っておくことは後々大変参考になります。
また、どこから出荷をするかも大切な質問です。
顧客: “通常はフルコンテナです。”
“It is usually by full container.”
営業: “運賃の支払いはどちらで精算されていますか?”(Who)
“Who pays the ocean freight?
先輩: この顧客の “通常は” に注意してください。つまり通常でない場合もあるということです。
新人: ということはフルコンテナ以外ということですね。では海上混載ということですか?
先輩: 航空貨物ということもありえます。ここで聞きそびれると見積もり提案は不完全なものになります。顧客のちょっとした言動には、時に隠されたニーズを含んでいることがあります。
例えば、「顧客が時計を何度も見始めた時」どんな隠されたニーズがありますか?
新人: 営業の話に飽きてしまって早く終りたいと思っています。
先輩: 次の会議が控えているとか、昼食の時間だとか、いろいろなことが想像されます。
新人: 注意深く顧客の言動を見ることの大切さがわかります。
先輩: とにかくしっかりメモをとりながら聞いてください。
新人: メモを会議中にとることは構わないですか?
先輩: 全く問題ありません。メモをすることによって顧客に営業の真剣さをアピールできます。
また情報を聞き逃すことがなくなり、見積もり作成の参考になります。
(第7回に続く)
第7回 -会議中にメモをとる7つのメリットとは?-
先輩: メモを取りながら会議を進めたときのメリットが7つあります。
新人: どんなものですか?
先輩:まず、最初の2つです。
①顧客に真剣に営業をしていることをアピールできます。
②整理された会話は新規ビジネス獲得により近くなる。
頭の中が整理され、同じことを繰り返して聞いたりすることがなくなります。必ず、メモを取りましょう。
新人: メモを取りながらだと会話に集中できなくなるような気がしますが。
先輩: 言われたこと一字一句をメモするのではなく、要旨だけをしましょう。何度か繰り返していくと慣れてきます。
新人: わかりました。
先輩: 会議中にメモをとる7つのメリットの3-6番目です。
③会議中わき道にそれにくくなります。また仮にそれても修復しやすくなります。
④上司への正確な訪問の報告が可能になります。また上司が次の指示を出しやすくなります。
⑤メモから起こした報告書を作成することで、担当営業が変わっても、顧客の情報をそのまま正確に引継ぐことが出来ます。
⑥メモから起こした報告書を作成することで、顧客の担当者が変わっても、新しい担当者に以前のサービスのニーズと会社/組織のニーズの情報提供が可能になります。
新人: ⑥番はあまりないとは思いますが。
先輩: 担当が変わるとき十分な引継ぎがされないことも米国では多々ありますので、わりと⑥も起こります。
会議中にメモをとる7つのメリットの7番目は
⑦クロージング(詰め)の際、最大の武器になります。
しっかりとニーズをメモりましょう。
新人: クロージング(詰め)の際の武器とはどういうことですか?
先輩: 大詰めで、顧客から聞き出したニーズを使って、当社のサービスを試していただく決断に一歩踏み入れることが可能性になります。
あとでそのシミレーションをやってみましょう。
新人: お願いします。
(第8回に続く)
第8回 -会議中にメモをとる7つのメリット(シミュレーション編)-
新人:やはり、この詰め(クロージング)が一番苦手だと思います。
先輩: そうですね。新規顧客のドアに入ることは割と簡単ですが、サービスを利用いただく決断をうながすクロージングはなかなか難しいです。
新人: 会議中メモを取らず、終了してから記憶をたどって情報を記入してもいいですか?
先輩: 正確には覚えていないものです。会議中にメモを取る習慣を作ってください。
またこのメモがクロージング(詰め)に役立ちますので、詳細な情報を会議中に残してください。この記録された情報が戦略を具体的にしていきます。
新人: このメモの情報は大変な財産ですね。
先輩: そのとおりです。
また、2度目以降の訪問時には必ずこのメモを見直し、以前の会議でどんな内容を話し合ったかを再確認しておくと営業の方向性が決まって効果的な時間の使い方ができます。
前回判明したニーズを確認しながら会議を進めると、違ったニーズが出てきたり、前回のものは必要なくなっていたりします。それでは商談を続けましょう。
(第9回に続く)
第9回 -5W1H(シミュレーション編)-
営業: “コンテナでない場合はどのように出荷されていますか?”(How)
“If it is not by container, how do you ship?”
顧客: “時々は海上混載のサービスを使っています。エアーはありません。”
“I use LCL service. We do not have any air shipment.”
営業: “運賃の支払いはどちらで精算していますか?”(Who)
“How is the freight paid, by you or your buyer/importer?”
もしくは、
“Who pays for the freight?”
顧客: “すべて米国払いです。”
“It is paid by me here in USA.”
先輩: 支払い主の聞き方は他に貿易のTermを聞くのもいい方法です。Termを聞くことによって運賃の支払いがどこで行われるかがわかります。
例えば、“TermはFOBですか?
”Is your business term FOB?
営業: “年にどのくらい出荷されていますか?”(When)
“How often do you ship a year?”
顧客: “6回ぐらいです。”
“It is about 6 times a year.”
新人: これでほとんどの必要な情報が得られたとおもいますが?
先輩: 大丈夫でしょう。
新人: この後、どのように進めていけばいいか教えてください。
先輩: ここからが勝負です。
いままでの情報収集はこれからはじめるサービスのニーズを聞き出すための準備です。
新人: ニーズといっても色々あると思いますが、どんなことに注意すればいいですか?